5分で読める「103万円の壁」、「106万円の壁」とは?

税金・年金
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ニュース等で「〇〇万円の壁」という言葉が頻繁に使われていますので、たくさんの方がその「壁」の変更や撤廃について関心を持たれていると思います。

まだよく分からないけど?といった人に向けて、その壁の概要を5分で読める記事にして解説します。

「103万円の壁」と「106万円の壁」は給与所得者にとって非常に重要な壁です。

「103万円の壁」は、税金に関すること、「106万円の壁」は、社会保険料に関することです。

税金、103万円の壁とは

現在「103万円の壁」はこれを超えると、所得税がかかり、扶養から外れます。

給料の年収が103万円を超えないように調整して働いている人も多いでしょう。

「103万円の壁」とは、所得税がかかるどうかの基準となる金額のことです。

給与所得者の収入額から基礎控除額48万円と給与所得控除額55万円を差し引いた額が103万円を超えると所得税がかかるため「103万円の壁」と言っています。

では、103万円を超えるかどうかの算出には、給与額の中で何が含まれるのでしょうか。

「103万円の壁」に賞与(ボーナス)は含まれます

所得税は、1月1日から12月31日までの1年間のすべての収入を合計して計算します。

そのため、毎月の給料だけでなく、賞与(ボーナス)も含まれます。
その他、残業代・住宅手当・家族手当・皆勤手当・役職手当・報奨金など、給与として支払われるすべてのものは含まれます。

ただし、会社からもらう結婚祝い金・見舞金・弔慰金など慶弔見舞金は一般通念上の金額範囲であれば非課税のため含まれません。

「103万円の壁」に交通費(通勤手当)は含まれません

ただし、含まれない通勤手当の金額には上限があり、電車・バスなど公共交通機関を利用している場合は1ヶ月当たり15万円です。

通勤手当の非課税限度額は、所得税法で定められており、おおよそ以下のようになっています。

自動車や自転車などの自分の車両を利用している場合は、通勤距離ごとに限度額が決まっています。

2km以上10km未満4,200円
10km以上15km未満7,100円
15km以上25km未満12,900円
25km以上35km未満18,700円
35km以上45km未満24,400円
45km以上55km未満28,000円
55km以上31,600円
片道通勤距離1か月当たりの非課税限度額2km未満全額課税
なお、どちらも、合理的な経路や運賃で計算する場合です。

▷出張・外出の交通費はいくらであっても含みません。これらは、すべて、会社の経費として処理されます。

アルバイト・パート・個人事業など副業をしている人は、

給料による所得(給与所得)と、副業による所得(雑所得または事業所得)に分けてまず計算し、次にそれぞれを合計します。

たとえば、A社のバイトで給与収入30万円、B社のバイトで給与収入40万円、フリーランスで50万円の収入(雑取得)がある人の場合は

>A社とB社の給与収入は合わせて70万円なので、給与所得は、70万円―55万円=15万円となります。

>給与所得15万円と副業の雑取得50万円を足すと、所得65万円となります。この金額が基礎控除額の48万円を超えますので、所得税がかかります。また、親や家族の所得税の扶養から外れます

>副業の収入がある人は、自分で確定申告が必要です。もし確定申告をしないと脱税になってしまいます。後で発覚した場合には、延滞税や無申告加算税もとられますので気をつけましょう

(ただし、勤務先が1カ所だけで副業による所得が20万円以下の場合は、確定申告は不要です)

現行ではアルバイト・パート等の給料だけの人は毎月8.5万円以下に抑えれば、103万円の壁を超えることはありません。

本人の所得税よりも、親や家族の所得税の扶養から外れることの方が困る

アルバイト・パート等で会社から給料をもらって働いている人は、年収が103万円を超えると所得税がかかりますが、さらに、親や家族の「税金」の扶養になっている場合、その扶養から外れます

アルバイトやパート職の人にかかる所得税は、103万円を超えた分の5%です。
たとえば、年収110万円であれば、所得税は3500円です。手取り収入は7万円増えるのですから、大きな影響はありません。
(学生は勤労学生控除がありますので、年収130万円以下なら所得税はかかりません)

しかし、本人を扶養している親や家族は、税金の扶養控除がなくなります
扶養控除とは、年齢が16歳以上の扶養親族がいる場合に税金を安くしてくれる制度です。

親の年収にもよりますが※、扶養控除を利用すると子供ひとりあたり税金の負担は約5~17万円ほど安くなります。扶養する人数が増えれば安くなる金額も増えます。
※年収250万円~850万円の人が扶養控除を利用した場合。

つまり、パート職やアルバイトで働いた給与所得額が103万円を超えた場合、家族全体の収入は減ってしまいます。

これが問題なので、「103万円の壁」を増額しようと選挙で訴えた政党が多くの国民から支持を得たわけです。

財務省とすれば税収が減ることを懸念していますが、税金納付額が減額となった給与所得者の手元にはその分収入が増えるわけですので、それが消費へと向かえば景気の押上に繋がると思われます。

社会保険、「106万円の壁」とは


「106万円の壁」とは社会保険加入の必要が生じる収入条件の壁で、社会保険に加入する条件の一つです。

今、厚生労働省では「106万円の壁」を撤廃する議論がされています。

従業員が51人以上の会社で、アルバイト・パート等で働く人は、年収がだいたい106万円を超えると、社会保険に加入する必要があります。

社会保険加入の条件は、年収ではなく、月収で判断しますので、月収88,000円以上の人が対象です。ですから正確には「年収105.6万円の壁」です。

月収「88,000円」は基本給の金額

この「88,000円」は所得税の計算とは違って基本給だけです。残業代・交通費(通勤手当)・住宅手当・家族手当・皆勤手当などは含まれません。

社会保険に加入する条件は基本給以外にも条件があります。

  • 従業員数が51人以上の企業で働いていること
  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 月額賃金が88,000円以上であること(年収換算で105.6万円以上→約106万円)
  • 雇用期間が2か月を超える見込みがあること
  • 学生ではないこと

「106万円の壁」のケース

社会保険に加入すると、当然、配偶者や親の扶養からは外れ、保険料を払う必要があります。一気に約15万円の負担増加となり、手取り額が落ち込みます

>「106万円の壁」のケースでは、夫婦世帯の場合配偶者の年収が106万円になった途端に、世帯の手取り額が突然下がります。元の手取り額に回復するのは、配偶者の年収が約123万円が必要です。

>また配偶者の年収が130万円になった途端に、夫婦世帯の手取り額が突然下がります。元の手取り額に回復するのは、配偶者の年収が約151万円が必要です。
これを「130万円の壁」と言います。

社会保険、「130万円の壁」とは

夫婦世帯では、専業主婦(夫)がパートで軽く仕事をしながら、配偶者の社会保険の扶養になっているケースが多いです。配偶者の社会保険の扶養に入ると、保険料の負担がゼロで、健康保険証を利用でき、また、老後に国民年金ももらえます

また、子供が親の社会保険の扶養に入ると、健康保険料を払わずに健康保険料を利用できます
(20歳になったら国民年金は自分で加入して保険料を払う必要があります。)

ところが、年収130万円以上になると、配偶者や親の社会保険の扶養から外れます。すると、自分で保険に加入して保険料を払う必要があります。
(60歳以上の人の場合は、社会保険の扶養から外れるのは年収180万円以上です)

 

106万円の壁と130万円の壁の違い

「年収106万円の壁」「年収130万円の壁」、どちらも社会保険に関する壁という点は同じですが、

「年収106万円の壁」は本人が社会保険への加入が生じるライン
「年収130万円の壁」は親や家族の社会保険の扶養から外れるラインです

「年収106万円の壁」は、この年収を超えると、社会保険に加入する必要が生じます。

従業員51人以上の会社で働く人が対象です。学生は対象外です。
また、週20時間以上働く人が対象です。つまり、1日あたり4時間以上、半日働く人が対象になります。

年収が106万円(月収88,000円)を超えても、週の労働時間が20時間未満なら対象になりません。

最後に

「103万円の壁」の増額変更は多くの国民の家計にとって喜ばしい事だと言えます。

一方で「106万円の壁」の撤廃は、将来の年金受給額が増えるというメリットよりも、パート職やアルバイトの人たちは今の生活費の高騰に少しでも稼がないといけないという理由では働いているわけですから、その収入の中から社会保険料を支払うというデメリットの方が大きいのではないでしょうか。

「106万円の壁」を撤廃しようとする理由は、労働時間を抑えて働く人が多く人手不足が発生していることと、医療費等の社会保障費が足りなくなっていることです。

ですから「106万円の壁」を撤廃して、社会保険に加入する人を増やそうとしています。「106万円の壁」を撤廃すると、社会保険の加入者が200万人増えると推計されています。

特に若い人たちは将来の年金があてにならないという不安があります。「将来少しばかり年金受給額が増えます」と言われても納得いくものではないでしょう。

追記

学校教育では以前から金融教育というものが取り入れられていません。新社会人になって初めて年末調整や確定申告などで、税金、年金のことを勉強することになります。

すぐに調べたいことが分かるサイトがありますhttps://www.mmea.biz/look_up/

若い世代の人たちの将来の生活不安の解消は、現状では自助努力に委ねられていると言えます。その不安を少しでも解消するためには、基礎的な金融知識を学ぶ必要があります。

社会人として生活を成り立たせるためには、「ファイナンシャルプランナー」という国家資格の第3級レベルの金融知識は持っておいた方が良いでしょう。




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