サラリーマンの賃金は本当に安いのか?

家計
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約30年間日本の賃金上昇は停滞していること、賃金格差が広がってきたことなどが最近になってようやく話題に上るようになりました。

家計の苦しさの実感を買い物をしている人に問いかけるなどは、マスコミが取り上げる格好の材料となっていますね。

日本は経済的には、GDPが世界第3位だから経済的に豊かなはずなのに、なぜこんなに生活が苦しくなったのでしょう。

そこで国民の大半を占めるサラリーマンの給与額について、厚生労働省や国税庁の賃金に関する統計、公務員の賃金統計を見てみました。

厚生労働省、令和5年 賃金構造基本統計調査での賃金は

厚生労働省の賃金構造基本統計調査は、全国の事業所を対象とした標本調査を基に作成されています。

 調査対象数、有効回答数及び有効回答率

 調査対象数:78,623事業所  有効回答数:55,490事業所  有効回答率:70.6%

 有効回答を得た55,490事業所のうち、10人以上の常用労働者を雇用する民営事業所(48,651事業所)について集計したものです。

厚生労働省、一般労働者の性別賃金、対前年増減率及び男女間賃金格差、対前年差の推移から抜粋

           男女      男性     女性   (単位 万円)
※令和 元  (2019)    306.0   …    336.1   …   249.8   …   
    2   (2020)     307.7         338.8        251.8           
    3    (2021)      307.4        337.2       253.6           
    4    (2022)      311.8         342.0        258.9         
    5    (2023)      318.3          350.9        262.6           
 

  注: ※令和元(2019)年3)」は、令和2年と同じ推計方法で集計した令和元年の数値を参考として掲載したもの。

調査の概要|厚生労働省
調査の概要について紹介しています。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査による日本人の民間給与年収の中央値は約318万円となっています。

国税庁 令和4年 民間給与実態統計調査での賃金は

国税庁の民間給与実態統計調査は、源泉徴収義務者(主に事業所)が提出する給与支払報告書を主なデータ源として作成されています。

調査概要から引用

・1年を通じて勤務した給与所得者については、次のとおりである。 給与所得者数は、5,078万人(対前年比1.2%減、60万人の減少)で、その平均給与は458万円(同2.7%増、119千円の増加)となっている。
 

・男女別にみると、給与所得者数は男性2,927万人(同1.9%減、57万人の減少)、女性2,151万人(同0.1%減、3万人の減少)で、平均給与は男性563万円(同2.5%増、137千円の増加)、女性314万円(同3.9%増、119千円の増加)となっている。


・正社員(正職員)、正社員(正職員)以外の平均給与についてみると、正社員(正職員)523万円(同1.5%増、76千円の増加)、正社員(正職員)以外201万円(同2.8%増、55千円の増加)となっている。

統計の抽出の仕方

統計学を駆使して求められた賃金の平均値だと思いますが、下記の抽出率をみて正確性を疑問視されるかもしれませんね。

令和4年分民間給与実態統計調査の事業所の従事員数等による層別、抽出率は、次のとおりです。

区分階層事業所の従事員数等の区分全体としての事業所の抽出率
1
事業所における給与所得者の抽出率
2
全体としての給与所得者の抽出率
1×2
母集団事業所数標本事業所数 標本給与所得者数
回答事業所数
     
第1層1~9人1/4001/11/4002,736,7596,8434,42815,404
第2層10~29人1 /2001/21/400501,5772,5071,88418,213
第3層30~99人1/601/61/360187,5403,1252,47225,703
第4層100~499人1/151/201/30060,4984,0343,21140,074
第5層500~999人1/31/1001/3007,0252,3431,86929,352
第6層1,000~4,999人1/11/2001/2004,5404,5403,62585,799
第7層5,000人以上(注1)1/11/2001/20070070057358,755
第8層本社(注2)1/11/201/202,8842,8842,26128,619
    3,501,52326,97620,323301,919
国税庁ホームページ:令和4年分民間給与実態統計調査の事業所の従事員数等による層別、抽出率から

抽出率が、ほぼ正しく全体把握をしていると仮定すると国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」による日本人の民間給与平均年収の中央値は約396万円となっています。

中央値で見る理由

数字のデータを見る時は、「平均値」が使われることが多いのですが、中央値で年収を見ると、平均値で見るよりもリアルな現状が分かります。

平均値は、計測するすべての人の年収を足し合わせたものを人数で割っているために、突出して年収の高い富裕層が平均年収を吊り上げてしまいます

中央値だと、年収を低い順(または高い順)から並べた時のちょうど真ん中に来る年収になりますので、極端に年収の高い人、低い人に引っ張られることなく、より実際の数字に近いデータを出すことができます。

公務員の給与等実態調査賃金は

公務員の給与等実態調査は、主に国家公務員法地方公務員法などの法律に基づいて支給される給料、諸手当、その他の報酬に関する情報を収集し、統計としてまとめたものです。

令和6年4月1日現在の人員は 250,434 人、平均年齢 42.0 歳、平均給与月額(俸給及び諸手当の合
計)は 414,801 円です。
給与法附則第8項の規定に基づき俸給月額が決定される職員、暫定再任用職員及び定年前再任用短時間勤務職員については、この人員等に含まれていません。

公務員の平均年収は、国家公務員が約681万円、地方公務員が約659万円です。これには夏と冬のボーナス(期末・勤勉手当)が含まれています。

種類国家公務員地方公務員民間企業
平均年収約681万円約659万円443万円
※参考:令和5年度国家公務員給与等実態調査

※公務員の平均年収は、国家公務員と地方公務員の平均年収から算出
※平均給与月額…俸給及び諸手当の合計
※国家公務員の平均年収は平均給与月額×12ヶ月+平均給与月額×4.5ヶ月(ボーナス)で算出

公務員の平均給与は、民間企業の給与所得者の平均年収と比較しても高い水準にあります。また、公務員の地位は法律で定められているため、年収が大幅に低下したり、不当に解雇されることはほとんどありません。

人事院は、2024年の国家公務員給与改定について、月例給を11,183円(2.76%)引き上げ、一時金の支給月数を年間4.60月(昨年比0.10月増)とすることを勧告しています。

民営事業所の給与は公務員の初任給並み

厚生労働省の賃金構造基本統計調査による民営事業所の従業員の平均年収は公務員の初年度の平均年収とほぼ同額です。

初任給平均年収
国家公務員(一般職)196,200円約323万円
地方公務員(都道府県)187,623円約309万円
地方公務員(政令指定都市)183,142円約302万円
地方公務員(市)184,524円約304万円

【2024年】一人当たり名目GDP ランキングで 日本は38番目

国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、年収の中央値は約396万円
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、年収の中央値は約318万円でした。

「日本は経済大国で、GDPは世界第3位というのに、なぜ多くの国民がこんなに貧しい生活をしているのでしょう」と冒頭で書きましたが、そもそも日本は個人所得が低いのは当たり前なのかもしれません。

1. 一人当たりのGDPとは

ある国の一年間の経済活動で生み出された全ての財貨やサービスの市場価値(GDP)を、その国の人口で割ったものです。国民一人当たりの平均的な生産額を表します。

一人当たりのGDP 世界順位

順位国・地域名2024年一人当たり
名目GDP
一人当たり
名目GDP成長率
1ルクセンブルク131,384ドル1.2%
2アイルランド106,059ドル1.7%
3スイス105,669ドル5.2%
4ノルウェー94,660ドル7.9%
5シンガポール88,447ドル4.4%
6アメリカ85,373ドル4.6%
7アイスランド84,594ドル5.7%
8カタール81,400ドル3.4%
9マカオ78,962ドル14.3%
10デンマーク68,898ドル0.9%
11オーストラリア66,589ドル1.8%
12オランダ63,750ドル1.6%
13サンマリノ59,405ドル3.7%
14オーストリア59,225ドル3.8%
15スウェーデン58,529ドル4.1%
16ベルギー55,536ドル3.5%
17フィンランド55,127ドル2.1%
18カナダ54,866ドル2.5%
19ドイツ54,291ドル3.0%
20アラブ首長国連邦53,916ドル3.9%
21香港53,606ドル7.1%
22イスラエル53,372ドル2.2%
23イギリス51,075ドル4.0%
24ニュージーランド48,531ドル2.1%
25フランス47,359ドル3.0%
26アンドラ44,900ドル2.5%
27マルタ41,738ドル7.9%
28イタリア39,580ドル3.3%
29アルバ38,018ドル3.5%
30プエルトリコ37,172ドル2.2%
31キプロス37,149ドル6.3%
32バハマ35,257ドル3.0%
33ブルネイ35,111ドル2.5%
34台湾34,432ドル6.1%
35韓国34,165ドル2.9%
36スペイン34,045ドル2.9%
37スロベニア34,026ドル5.6%
38日本33,138ドル-2.0%
参考資料:IMF名目GDPランキング

現在、個人所得や一人当たりのGDPは韓国以下となっています。

一人当たりのGDPと年間平均賃金がほぼ同額であるという事はどんな意味を持つのでしょう。
(1ドル144円 では33138ドル=477万円)

2,同額になる可能性と意味

単純な計算モデルの場合:

  • 経済活動に参加している全ての人が、同じ金額の賃金を一年間受け取っている
  • 国内で生産された全ての財貨やサービスが、全て賃金として支払われている
  • その他の所得(利子、配当など)がゼロ という単純なモデルを想定した場合、一人当たりのGDPと年間平均賃金は一致する可能性があります。
  • 現実の経済では:
    • 非労働所得: 賃金以外の所得(利子、配当、不動産収入など)が存在します。
      (投資そのものはGDOに含まれますが、投資による収益は含まれません)
    • 非正規雇用: 正規雇用と比較して賃金が低い非正規雇用者が多く存在します。
    • 国による定義の違い: 各国でGDPや賃金の定義が異なる場合があります。
    • 統計の誤差: 統計調査には必ず誤差が伴います。

3. 同額であることの解釈

  • 経済構造が単純: 非労働所得が少なく、経済活動が主に賃金労働によって支えられていることを示唆する可能性があります。
  • 所得格差が小さい: 全ての人がほぼ同じ金額の賃金を得ていることを意味する可能性があります。
  • 統計的な偶然: 統計の計算方法や定義の違いによって、偶然一致している可能性もあります。

最後に一言

人の成長には「自己理解」「他己理解」が必ず必要な要素となります。

国全体についても同様ですので、経済発展には国民一人ひとりが自分の国の経済状態に関心を持つことが大切ではないでしょうか。

有能で人間性の高い国のリーダーを選ばないと「少子高齢化による年金問題」「物価高による生活難」「経済格差による貧困問題」等々の社会問題はいつまでも解消されないでしょう。

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